しゅわしゅわ反応のひみつ!クエン酸×重曹で楽しく学ぶ化学変化(吸熱反応)

桑子研
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【身近なもので安全に!】クエン酸×重曹でつくる“発泡反応”実験のススメ

ラムネを口にしたときのあの「しゅわしゅわ」とした感触。バスタブに入浴剤を入れた瞬間に、泡がぶくぶくと広がり、湯船いっぱいに広がる様子。これらは、私たちの日常に隠された、身近で面白い化学反応の証です。理科の実験というと、難しそうな薬品や器具を想像するかもしれませんが、実はこの「しゅわしゅわ」は、家庭にあるたった二つの材料だけで再現できるんです。

先日、科学部の生徒たちが目を輝かせながら、「先生、見てください!」と声をかけてくれました。彼らがビーカーの中で見せてくれたのは、クエン酸と重曹を混ぜ、水を加えるだけで、まるで生きているかのように泡が次々と発生する様子。その小さな泡が織りなす不思議な光景に、見ているこちらも思わず笑顔になってしまいました。

この実験の素晴らしい点は、なんといってもその手軽さと安全性。クエン酸も重曹も、食品や日用品に使われている安全な成分です。だからこそ、学校の授業だけでなく、夏休みの自由研究やご家庭での親子実験にもぴったり。さあ、一緒にこの身近な“魔法”の正体を探ってみましょう!

■ 準備物と手順

準備物:
• クエン酸(粉末/薬局・100均で可)

amazon クエン酸

重曹(NaHCO₃/家庭用でOK)

amazon 重曹

• スポイトまたはスプーン
• 水
• 小さなビーカーや紙コップ

手順:

  1. 重曹とクエン酸を1:1の割合でコップに入れる
  2. 水を少量加える
  3. 発泡を観察、発生した気体の特徴を記録

■ 実験のしくみを化学で解説!

クエン酸(C₆H₈O₇)は、カルボキシル基(-COOH)を複数もつ「酸性」の物質です。一方、重曹(NaHCO₃)は「アルカリ性」。この酸とアルカリが混ざり合い、水を加えることで、以下の化学変化が連鎖的に起こります。

クエン酸から「水素イオン(-H)」、重曹から「ナトリウムイオン(Na⁺)」がそれぞれ分離します。

クエン酸と重曹が中和反応を起こし、新しい物質「クエン酸ナトリウム(C₆H₅O₇Na₃)」が生まれます。

同時に、炭酸(H₂CO₃)が生成されますが、これは非常に不安定な物質。そのため、すぐに水(H₂O)と二酸化炭素(CO₂)に分解されます。

これらの化学反応は、一つの式でまとめて表すことができます。

C₆H₈O₇ + 3NaHCO₃ → C₆H₅O₇Na₃ + 3CO₂ ↑ + 3H₂O

つまり、ビーカーの中から「しゅわしゅわ」と立ち上る泡の正体は、私たちが普段吐いている息と同じ、二酸化炭素だったのです。炭酸飲料が泡立つ原理と全く同じですね。

■ なぜ冷たく感じるのか?

この反応、手で触ってみると不思議とひんやりと感じます。これは、この化学反応が吸熱反応だからです。吸熱反応とは、周囲の熱を吸収しながら進む反応のこと。まるで、氷が溶けるときに周りの空気を冷やすように、クエン酸と重曹が反応する際に周りの熱を奪うため、ビーカーや手から熱が奪われ、冷たく感じるのです。これは、中学校の理科で習う物理化学の導入としても面白いポイントです。

理科の授業では、「身近さ」と「安全性」が大事な要素。このクエン酸×重曹の実験は、その両方を兼ね備えたうえに、化学的な本質まで学べる優秀な題材です。身の回りにある「なぜ?」を探究するきっかけとして、ぜひ挑戦してみてください。

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